【抱腹絶倒! 音風ソナタの音楽落語】リヒャルト・シュトラウス「指揮者10か条」とは?音風ソナタが面白おかしく紹介

抱腹絶倒! 音風ソナタの音楽落語

やあ、みんな、音風ソナタだよ。リヒャルト・シュトラウスの「指揮者10か条」ってみんな知ってるかな? 大作曲家で大指揮者だったシュトラウスの教訓をまとめたものなんだ。それがどういういきさつで生まれたのか、想像でちょっとした落語の世界を創ってみたから聞いてみて。指揮者の苦労や楽しみを、少し笑いながら感じてもらえたらうれしいな。

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昔々、ある大都市にリヒャルト・シュトラウスという名高い作曲家兼指揮者がいた。

若い頃のシュトラウスはフランスの作家ロマン・ロランに「気違いだ!」と評されるほど激しい身振りを身上とするダイナミックな指揮スタイルだったんだ。それが後年はオーケーストラをチラ見する簡素なスタイルになったんだ。

また、シュトラウス先生は、家に帰ってトランプするために大急ぎで指揮して演奏時間を短縮させるほどのトランプ好きだったけど、それ以外は音楽に対する情熱は人一倍で団員に厳しい人だった。

ある日、シュトラウス先生がとあるオーケストラの指揮を執っていた。その日の演奏曲は、シュトラウス自身が作曲した壮大な交響詩。オーケストラのメンバーはみんな緊張していたが、特にトロンボーン奏者の田中君は、この日のためにずっと特訓をしていた。

演奏が始まり、シュトラウス先生はその指揮棒を振り始める。みんなが一生懸命に演奏する中、先生の視線がトロンボーン奏者の田中君に。先生の目はまるで、「がんばれ、田中君!」と言っているように見えた。その光景はまさにこんな感じだったのかもしれない。

田中君は先生の励ましを受け、ますます気合を入れてトロンボーンを吹く。しかし、あまりの熱意に、音が大きくなりすぎてしまった。トロンボーンの音が他の楽器を圧倒してしまい、オーケストラのバランスが崩れてしまう。

周りの奏者たちは慌てふためき、シュトラウス先生も眉をひそめる。演奏が終わると、先生は田中君を呼び、「トロンボーンは、もう少し控えめに吹くんだよ。音楽はバランスが大事なんだからね」と優しく教えてくれた。

この出来事から、シュトラウス先生は「指揮者10か条」を考えることに。特に「金管楽器は決して励ますように見つめるな」という教訓が生まれたのは、この田中君の熱演があったからなんだ。

そして、この「10か条」が指揮者たちの間で伝わり、今では伝説のように語り継がれているんだよ。

1 自分自身が楽しむのではなく、聴衆を喜ばせるために音楽をすることを心がけよ。
2 指揮するとき、君が汗をかくべきではない。ただ聴衆だけが暖かくなるべきだ。
3 《サロメ》や《エレクトラ》をメンデルスゾーンの〈妖精の音楽〉であるかのように指揮したまえ。
4 金管楽器は決して励ますように見つめるな。重要な出だしの合図をするためにちらと見やるだけにせよ。
5 それとは逆に、ホルンや木管楽器からは決して眼を離すな。総じて聞こえる時にはもう強すぎるのだ。
6 金管楽器が充分強く吹いていないと思うなら、さらに二段階ほどそれを弱めよ。
7 君が暗記している歌手の言葉ひとつひとつを自分で聞くだけでは足りない。〈聴衆〉が難なく追うことができなければならない。歌詞がわからないと聴衆は眠ってしまう。
8 歌手の伴奏は常に、歌手が苦労せずに歌うことができるようにせよ。
9 極度に速いプレスティッシモに達したと思うなら、テンポをさらに倍の速さにせよ。
10 以上のすべてをすなおに心がけるなら、君のりっぱな才能と大きな能力があれば、君は常に、君の聞き手を完全に魅惑することになるだろう。
 
出典:カール・バンベルガー編、福田達夫訳「指揮者の領分」(春秋社)

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さて、この噺を聞いて、シュトラウス先生の苦労が少しでも伝わったかな?指揮者って、ただ棒を振るだけじゃなくて、オーケストラ全体を見渡し、バランスを取る大変な役割なんだよ。でも、そんな大変さの中にも、音楽の楽しさや生徒たちへの愛情があるんだね。

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